小児歯科
小児歯科
小児という言葉は一般に小さな子供に使われますが、年齢でいうと0〜18歳前後のことを言います。発達途上にある小児の病気や異常は身体に直接的な障害だけでなく、その後の成長発育に影響を及ぼします。小児歯科は身体的だけでなく、精神的、社会的に発育過程にある小児のお口の形態や機能の発育を中心に、全身的な成長発育と保健に関わります。発育や年齢によって予防方法、治療方針が小児は特に変わってきます。その子に合わせた管理が必要なのです。
当院では小さなころから来てもらい、まず歯医者に予防をしながら慣れてもらうところから始めます。いきなり治療は出来ない子が多いです。歯医者が怖いところになってしまってはお家の歯磨きにも支障が出てきますし、治療が手遅れになってしまうことがあります。目標は健全な永久歯と大人になっても自分の歯を自分で管理できるようになることです。
むし歯はなぜ起こるか知っていますか?むし歯はミュータンス菌といったむし歯菌が糖のような炭水化物から酸を作りだし、歯を溶かすことが原因になります。
その中でも歯の生えたばかりのエナメル質は表層の石灰化が進んでいないため、むし歯になりやすいです。また、複雑な溝やガチャガチャの噛み合わせ、唾の出にくい人もむし歯になりやすくなります。
特にお子さんの石灰化の進んでいない歯はむし歯の進行も早く、いきなり歯の頭の半分がむし歯で無くなってしまうことも!そのため子供の時の歯は大人以上にむし歯に気をつけなければいけません。
一番大事なのはもちろん歯磨きです。歯磨きが完璧に出来ると菌も菌のエサになる糖も無くなります。しかしどれだけ歯ブラシとフロスを頑張っても菌や糖をゼロにすることは出来ません。なので他の予防も必要になってきます。
その他にはキシリトールといった代用糖があります。と言っても全てを代用糖にすることは出来ませんし、摂りすぎると下痢することもあります。お子さんの場合は脱水を起こしやすいので注意が必要です。
歯にフッ素を塗ることもむし歯予防になります。これはエナメル質の表層を溶けにくくする効果があります。医院で高濃度のフッ素を塗るだけでなく、低濃度のフッ素にも効果があります。食べ物の酸でも歯が溶けるのですが、体の防御機構で再石灰化が起きます。その時にフッ素があるとより効果的です。しかし、フッ素を摂りすぎるのもよくないので、年齢に合わせたフッ素を使いましょう!
シーラント(予防填塞)といった予防方法もあります。これは歯の溝といったむし歯の起きやすい部位を先に埋めてしまって菌やエサが来ないようにする処置です。定期検診でそのシーラントが外れていないか、チェックする必要があります。その他、食事、間食の糖の摂取をコントロールするなどがあります。
定期検診では磨けていないところを上手く磨く練習や、むし歯の早期発見、シーラントの脱離などをチェックすることによって歯を失うリスクを少しでも回避していきます。
近年では小児のむし歯は減少傾向にあります。しかし、歯並びの問題はむしろ多くなってきています。その原因の一つに口腔習癖があります。口腔の機能は骨や筋肉、機能、呼吸、嚥下、咀嚼、発音などが関わります。そしてその口腔の動作と形態には密接な関係があります。正常な機能は正常な口腔形態を作りますが、機能に異常があると形態に悪影響を及ぼします。その問題のある異常機能をトレーニングで取り除くのが筋機能療法です。異常な機能が残っていては矯正治療を行なっても後戻りをしやすくなります。これは大人の矯正でも同じです。フッ素はむし歯予防に行いますが、筋機能療法は発育のための予防処置なのです。
筋機能療法は小児の協力が得られるようになると始められます。口呼吸は免疫にも関わってくる重大な口腔習癖ですし、年齢が進むと出てくる口腔習癖もあります。定期検診では癖のチェックも行い、むし歯だけでなく、発育も健康に出来るよう努めていきます。
乳歯では装置の使用に制限があり、永久歯の矯正のような本格矯正を行うことが難しいです。しかしこの乳歯は後々の永久歯にも影響を与えます。なので小児矯正では歯性の異常と口腔習癖、咬合関係の異常を治療の対象とします。
歯性の異常には顎を広げる矯正装置を用いたスペースコントロールが有効です。このスペースはう蝕で失われることもあります。その他にも細かな噛み合わせの異常もあります。その場合は噛み合わせの調整を行うことが有効です。
口腔習癖には上記ような筋機能療法を行うことが有効です。
咬合関係の異常には反対咬合、交叉咬合、出っ歯、開咬、過蓋咬合などがあります。これらは筋機能療法や矯正装置を用いて対処します。
お子さんの歯並びは成長の余地があるため大人の矯正で必要になるような骨格をいじる手術が不要になることもあります。また、歯を抜いて行う矯正の可能性を減らしたり、大人でする矯正の難易度を下げ、より成功率を上げることも出来ます。
生まれつき持った体の異常が口に影響することもあります。代表的なものでいうと口唇・口蓋裂という骨や粘膜の癒合不全。ダウン症・ターナー症候群・鎖骨頭蓋異形成症などがあります。どれも後天的に起きる口の異常に比べると頻度は低いものにはなります。
上記のような大きな病気は大きな病院との連携が不可欠になります。しかし、その他にも上記のような症候群と関係しない歯の数の異常、形の異常、粘膜の形の異常などもあります。いずれにしてもあらかじめ分かっていれば対策することが出来ます。乳歯には異常が出ていても永久歯には問題のないこともあります。